静脈瘤とは、二本足で歩く人間にとって宿命ともいうべき病気です。二本足で歩く人間の場合、足の静脈は重力に逆らって流れなければならないため、他の静脈より流れにかかる負担が大きいのです。そのため、弁の機能がうまく働かなくなった状態です。静脈瘤とは、どんな病気なのかを理解して、静脈瘤が悪化しないようにしましょう。
人間の手足の静脈(血管)には、血液が逆流しないための弁があります。二本足で歩く人間の場合、足の静脈は重力に逆らって流れなければならないため、他の静脈より流れにかかる負担が大きく、そのために弁の機能がうまく働かなくなった状態が静脈瘤です。
血管には大きく分けると、動脈、静脈、毛細血管の3種類があります。
酸素や栄養分を含む血液を全身に送り出す動脈は、内膜、中膜、外膜の3層からできています。そのメカニズムは自ら収縮と拡張を繰り返すことで血液を送り、弾力性に富んだ断面は円形をしています。
静脈は、心臓から全身に送られた血液が毛細血管で酸素や栄養分と引き替えに二酸化炭素や老廃物を受け取ったものを心臓に戻します。動脈のように収縮や拡張運動を行わない代わりに、血管中の半円形の弁で血液の逆流を防ぎ、断面は楕円形をしています。
毛細血管は身体のごく一部を除いて、あらゆる部分に行き渡っている、直径が1000分の1ミリという細さの血管です。
私たちの体内の血管はなんと全長が約10万キロもあり、地球の2周班の長さに相当します。
初期の症状は
その後、静脈が浮き出て、うねうねと盛り上がり、外見的にはっきりわかるようになります。さらに進むと、静脈瘤の中に血栓(血管の中で血液が固まって固形物になったもの)ができ、しこりになり歩くのにも痛みを感じ、熱感も感じるようになります。また、湿疹や潰瘍になり血管が破裂して出血する場合もあります。
静脈瘤は比較的進行の遅い病気ですが、静脈瘤から起こる合併症はたくさんあります。
悪化しないうちに、早めに治療を受けましょう。
女性の静脈瘤の発生頻度は男性の約3倍で、特に妊娠後に静脈瘤にかかる例が圧倒的に多いです。
妊娠すると、下半身の静脈血が心臓に戻りにくくなるために、静脈瘤を引き起こしやすくなります。また、長時間に立ちっぱなしの仕事の人は足の静脈の圧が高くなり、血管が拡張しやすく、静脈弁が壊れやすくなります。
立ちっぱなしであまり動き回らない仕事
美容師、コック、コンパニオン、デパートガールなどは静脈瘤の予備群といっても良いでしょう。
弾性包帯・弾性ストッキングの着用を。。
足の静脈の流れをできるだけ妨げないことが大切です。そのためには常に弾性包帯を巻き続けていただきたいのですが、日中、仕事中などどうしても無理な場合は、弾性ストッキングを着用して下さい。立ち仕事による静脈血のうったいを軽減してくれますし、きちんとサイズのあったものなら決して苦痛ではなく、むしろ活動し安いはずです。
静脈瘤の症状の1つであるむくみもある程度は改善されますから美容的観点からも、是非とも常用して下さい。また、ハイソックスタイプもありますので、男性の方でも、着用できます。
包帯の巻き方
目的
包帯をまくことや弾性ストッキングを履くことにより、血流を促進し、症状をやわらげます。
手術を受けた方、これから手術を受ける方、また、手術をしていない方も必ず行っていただきたい治療です。
方法
フリータイ(白十字社製)5cm、7.5cm幅の包帯を2本1組として使用します。足の指先から包帯を巻き上げるようにして、巻いていきます。入浴時以外は常に巻いておいて下さい。
足の静脈の流れをできるだけ妨げないことが大切です。そのためには常に弾性包帯を巻き続けていただきたいのですが、日中、仕事中などどうしても無理な場合は、弾性ストッキングを着用して下さい。立ち仕事による静脈血のうったいを軽減してくれますし、きちんとサイズのあったものなら決して苦痛ではなく、むしろ活動し安いはずです。
静脈瘤の症状の1つであるむくみもある程度は改善されますから美容的観点からも、是非とも常用して下さい。また、ハイソックスタイプもありますので、男性の方でも、着用できます。
冷たいシャワーを。。
皮膚を冷やすと末梢血管は収縮します。足を冷やすことは、静脈瘤治療の助けになり、下肢を温めることは静脈瘤にとってよくありません。
予防によい運動は。。
筋肉ポンプ作用を効率的に起こし、筋肉を強化し、しかも足に負担をかけない運動がよいです。
疲れを貯めない上手な歩き方
まず、姿勢が大事です。猫背はよくありません。背中を曲げ、うつむきかげんで歩いていると、足に余分な負担がかかります。胸を張り、足を挙げ気味にまっすぐ前を向いて、元気良く歩きましょう。また、歩幅をやや大きめにし、手の振りも大きくしましょう。女性の方はハイヒールはなるべくはかないようにしましょう。
立ち仕事の人が注意すべきことは。。
座りっぱなしも静脈瘤の原因に。。
座りっぱなしでいても血流が滞りやすいのは当然で、立っているよりは幾分か負担が軽いといった程度です。デスクワークの人は最低1時間に1度は席を離れ、足の屈伸を行ったり、席に着きながらも軽く足踏みの動作をしたり、足の指を動かすことも有効です。
足を心臓より高くしましょう
寝ているときにクッション等をいれ、足を高くします。注意することは足の先だけを高くして、肝心のふくらはぎの部分が布団から浮いてしまうような状態にしないことです。これでは足が突っ張って静脈の血液循環は改善されません。
治療法
1.静脈抜去術
手術による代表的な治療で ストリッピングといわれ、静脈瘤にかかった静脈を取り除いてしまう方法です。静脈瘤にかかった静脈を抜き取ってしまうというけれど、血液の流れがおかしくなってしまうのでは?と思うかもしれませんが、足の静脈には表在静脈と深部静脈とがあり、表在静脈は深部静脈という本流を補助する支流の静脈です。
静脈抜去術はこの表在静脈瘤に対して行われますので、血液循環にはなんら支障を来すことはありません。静脈瘤にかかった表在静脈は壊れた支流でしかありません。これがあるから静脈の血液の流れがおかしくなっているわけですから、取ってしまった方がかえって良いのです。
この手術は全身麻酔または、腰椎麻酔で、1週間の入院が必要となります。
2.硬化療法
硬化剤を患部である弁の壊れた静脈に注入し、人工的に炎症を起こすことによって静脈を閉塞させる方法です。手術をせず治療を進めて行きます。入院せず通院治療で済むという大きなメリットもあります。治療は外来で15-30分程度で済み、受けた後に活動制限もなく、すぐ歩いてかえることができます。歩いた方が血液の流れをスムーズにするためにはよいのです。仕事も翌日から、入浴は2日後から許可されます。
3.高位結紮法
高位結紮法とは、主に硬化療法と併用して行うストリッピングとは違う、もう1つの手術療法です。静脈瘤にかかった静脈の本幹が太すぎると、硬化療法だけでは閉塞させるのが難しく、硬化療法の硬化を助けるために行う小さな手術です。
治療しようとする静脈の根元を結紮(しばること)した上で、その下の部分に硬化療法を行うもので、足の中でも高い部位(心臓に近い)に対して結紮が行われることから、この名があります。要するに、静脈を結紮することによって硬化剤の使用量が少なくて済むようにすることが高位結紮の主な目的で、ストリッピングと硬化療法の中間に位置する手術法といえます。手術ですから足の付け根または、膝の後ろを少し切りますが、傷口は2cm程度で、傷もほとんど残りません。時間も20分程度で済みます。
終わりに
静脈瘤は自然治癒するということはありません。
悪化させないように再発防止の予防法を守り、快適な日常生活が送れるように取り組んで下さい。
東京女子医科大学形成外科外来パンフレットより
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