指の切断
救急処置 (そばにいる人が行う)
1)駆血:ハンカチ、タオルなどで指の付け根をしばる。心臓より手を高く挙げる。出血を止めるのは1時間が限度です。1時間を超えたら、一旦、15分間程度ゆるめましょう。それまでには病院に救急車で到着しています。
2)多量に出血していたら、足を高くして、横に寝かせる。
3)救急車を呼ぶ
4)切断された指は、汚れを拭いてビニール袋にいれてから、氷の入ったビニール袋に入れてください。
直接、氷水に入れると、ふやけてしまい、再接合できなくなります。
病院で(医師の治療)
1)まず、意識状態、血圧、脈拍など全身状態の把握に努めます
2)次に、どの指がどこからどの程度切断されているかを診察します
3)受傷時刻、受傷原因、既往歴、アレルギーの有無などを尋ねます
4)レントゲン撮影で骨の損傷の程度を検査します
5)顕微鏡下に再接合が可能かどうか判断します
最近では条件が良ければ、指の爪の根元での完全切断でもうまく接合できることがあります
7)手術室と麻酔科に連絡し、手術開始の時間を決めます
8)待っている間は破傷風の予防注射と点滴をします
9)手術時間が来たら、手術室へ入り、着替えて、手術台に横になってから、麻酔をかけます(通常は、脇の下から腋窩(えきか)ブロックを行います)(2、3本と多指切断の場合は全身麻酔のこともあります)
10)切断指の指動脈と静脈を顕微鏡下に探します
11)骨をワイヤーで固定します
12)屈筋腱と伸筋腱を縫合します
13)指動脈を10-0ナイロン糸という細い糸で吻合します
通常1本つなぐのに15分から20分かかります
動脈の損傷の程度によっては、血栓を生じて、血流の回復が得られない場合があります。その場合はもう一度つなぎなおしたり、ほかの場所から静脈を採取して、静脈移植を行ったりします。また、手首の太い動脈(橈骨動脈)に注射針を留置して、血管拡張薬や血栓溶解剤を動脈注射します。
14)うまくつながれば、静脈から血液が流れ出してくるので、静脈を吻合します
15)指神経をつなぎます
16)皮膚を縫合します。腫れで皮膚を閉じることができない場合は皮膚移植を行います
17)手術は終了です。通常は1本の指切断に3、4時間手術時間がかかります。
術後について
1)タバコは血管が収縮するので、絶対に吸ってはいけません。禁忌です。3ヶ月間は吸えません。
2)腫れをできるだけ防止するために、手は高く吊っておきます
3)点滴で抗凝固療法を行います。抗生物質の投与も行います。
4)術後2、3日で吻合血管が閉塞した場合は、再手術を行います。
5)術後1週間程度で退院許可がおり、外来通院でガーゼ交換や抜糸を行い、約1ヶ月で指骨を固定していたワイヤーがとれます。抜去時期はレントゲンで判断しますので、多少前後にずれます。
6)指の温浴マッサージと積極的なリハビリテーションを行います。
7)指の腫れは長く続きますが、完全に腫れが引くのに、半年程度有する場合もあります。どんなに腫れていても8ヶ月程度で完全に腫れが引いてきます。